相続税の申告は、基本的には相続人全員の連名で提出するのが前提。
でも、税金を払うのはそれぞれ。
相続人の1人が相続税を払わなかったらどうなるのでしょうか?
相続税の申告書は1つが基本
相続税の申告は、ほかの税金の申告と比較して、大きな違いがあります。
それは、申告書は1人1つではないということ。
相続人全員が連名で1つの申告書を提出するのが通常です。その理由は相続税の計算方法にあります。
全員が取得した相続財産を合計して、相続税を計算し、それぞれの相続人の財産の取得割合で按分するというしくみになっています。
そういう背景があって、基本は連名で提出します。
全員で1つの申告書の中身を確認して、みんなで提出するというイメージです。
それだけにみんなが納得できるように遺産分割をまとめる必要があります。
基本は連名で提出するのですが、相続人それぞれが提出することもできます。
ただし、そういう場合は、お互いが話し合いをしていないようなケース。
それぞれが申告書を提出したとしても、それぞれで申告するので、お互いにやりとりをしなければ、評価額もあわないでしょうし、税額もあわない場合も。
税務調査に来てくれといっているようなものです。
相続人の1人が相続税を払っていないと…
相続税の申告書は、相続人全員で提出するとしても、相続税はそれぞれで払います。
ただ、相続人が2人いたとして、そのうち1人は払えていないというケースがあった場合、どうなるのでしょうか。
その場合は、もう1人の相続人に請求がいくことになります。
じぶんはきちんと相続税を払っているのに…です。連帯納付の義務というのがあるのです。
ただ、支払う義務があるのは取得した相続財産の範囲内に限られます。
いずれにしても、1人の問題ではなくなってしまうので、そういうのは避けたいところです。
ちなみに、わたしはその光景を目の当たりにしたことはありません。
これまで申告のしごとをやらせてもらったお客さまは、きっちり相続税を払っていただいていますので。
ポイントは遺産分割の話し合い
そういうことが起きる原因として2つ挙げてみます。
1つは相続財産の分割にバランスがとれていないこと。
相続財産が不動産ばかりで、預金などの金融資産がすごく少ない。
そのようなケースで手もとにあるお金が少なければ、払えないという可能性が出てきます。
不動産が自宅でお金に変えられない、あるいは変えようにもすぐに変えることもむずかしく、売り急ぐと足元を見られる可能性があります。
もう1つは、単純にお金管理ができないという場合。
いずれにしても相続人全員に「払えるか?」の対策は必要です。
相続財産をどう分けるかの話し合い(分割協議)で、お金とそれ以外の財産のバランスをきっちり見ておく。
相続人にお金の管理が苦手そうな人がいれば、分割協議のあとでお金を分配するときに、天引きするなど手を打っておくことが必要でしょうね。